ローウィン 第2回

ashling-the-pilgrim ストーリー

第2章の主人公は炎族(Flamekin)のアシュリングです。

アシュリングは旅する巡礼者です。ローウィン全土を渡り歩いて、依頼された物品の運び屋をこなすことを生業としています。

彼女はきょうもまた旅の途中だったのですが、舗装もなく草木に覆われた狭い小道を進んでいる道中、凄惨な光景に出くわします。

何者かの死体が、木に吊るされていたのです。

同族による処罰として杭打ちにされたエルフかと思ったのですが、実際には、アシュリングの同胞たる炎族の死体でした。亡骸の正体に気づいたとき、アシュリングの動揺と驚愕を示すように、肩の周りで炎の渦が激しく燃え上がりました。

しかしアシュリングのショックは長く続きません。目の前の光景は、この世界において驚くべきことでもなかったのです。エルフが服従させた相手に過酷な基準を押し付け、それを満たさない者を残酷な刑罰に処することは有名でした。

死骸の下には、ボガートが積み上げた骨やがらくたがありました。どうやら崇拝対象にされていたようです。

心のざわつきや嫌悪感は消えませんが、アシュリングには旅を再開して前に進まなければいけない切実な事情と決意がありました。エルフの警告として晒された同胞の無残な死体と、ボガートによって作られた祭壇を自らの炎で焼き払い、先を急ぎます。

***

場面は変わり、物語の舞台はメロウ(Merrow;ローウィン世界のマーフォーク)たちの生活圏に移ります。

ここは低地を流れるワンダーワインと呼ばれる川で、そこに浮かぶ人工島の村は、川の住人と陸の者が交わる場となっています。住居や桟橋のみならず、休憩したい旅人向けの酒場まであります。

いま、炎族の巡礼者・アシュリングが、川の渡し守であるメロウの船長シグに渡航費用を支払ったところでした。彼女は旅の目的地へ進むためにワンダーワイン川を渡る船に乗ろうとしていたのです。

この船を操縦するのはシグ船長とその弟子で、同乗する別の乗客にはキスキンの母子連れがいました。キスキンの子どもたちは炎族を見慣れないのか、炎をまとうアシュリングを恐れている様子です。母親も身の安全を心配し、アシュリングといっしょに乗ることなどできないと、失礼な態度もはばからずシグに別の対応を求めます。

シグは説得を試みますが、あわやヒステリー寸前のキスキンの婦人に対して、別のアプローチをとらざるを得ないと考えます。すなわち弟子に魔法を使わせて、キスキン母子とアシュリングの間が水の保護膜で隔てられるよう、アシュリングの身体を包む球体を作らせることにしたのです。

これによってキスキン母子を納得させることができ、さあ出発だというとき、「待って!」と小さな叫び声が聞こえます。

蜂の羽音のような声の主は、羽を持った三人のフェアリーでした。岸沿いの茂みから現れた一人の男の子と二人の女の子の三人組は、船を目指して一直線に向かってきます。小鳥ほどの大きさの体には黄色やオレンジ、緑の鮮やかな縞模様や斑点があり、スズメバチのようでもありました。

空を飛べるのに船に乗る必要などあるのか……シグはいぶかりますが、フェアリーの男の子は「船が好きなんだよ」と答えるのみ。フェアリーたちは気まぐれに同行を決めたに違いなく、仮にその理由を問いただそうとするならば、一時間にも及ぶ言葉遊びと冗談ではぐらかされるだけです。

フェアリー三人衆を乗客に追加し、ついに船は出発します。

シグの特殊な魔法能力によって形成された水の膜は、半球状の殻のような機能美に優れた形に変わります。非常に強固なガラスのようになり、ワンダーワイン川を渡るための立派な船となったのです。アシュリングが乗ると、キスキン母子との先の約束どおり、水でできた球体が彼女の身体を包み込みました。

出発後の船のなかでは、キスキンの子どもたちがアシュリングを質問攻めにします。「目から火を出せる?」「岩を食べているってホント?」……子どもたちは、炎をまとうアシュリングの身体に興味津々なのでした。

しかし、平和な時間は突如として破られます。

皆を乗せた水の船が突然ガラスのように砕け散ったのです。キスキン一家は叫ぶ暇もなく、極寒の川へと放り出されました。

咄嗟にキスキンの子ひとりに手を伸ばし、球体のうえへと助け出したアシュリングは、事態を理解し始めます。巨大な両生類(アーボマンダー)が水面に突如現れ、シグ船長に衝突したのでした。襲撃によりシグ船長が気絶し、船を維持していた魔法が霧散してしまったのです。

炎族であるアシュリングには、手につかんだ一人の子どもを支えることが精いっぱいです。シグの弟子である船員はパニックに陥りながらも、アシュリングに鼓舞されながら他のキスキンの救助を試みます。

そこに再びアーボマンダーが現れ、シグの弟子は悲鳴を上げる間もないまま一飲みにされてしまいました。

アシュリングの足場となっていた水球の残骸である円盤も消滅し、絶体絶命の危機が訪れます。万事休すか――

しかし驚いたことに、水中へ落下するような事態は起こりません。アシュリング自身が落ちることもなければ、つかんでいたキスキンの子どもも水面に浸かってはいませんでした。

「落ち着きなさいな、私たちがついているわ」

アシュリングの右肩のあたりで、フェアリーの羽音が混じった小さな女の声が聞こえました。

「フェアリーだ!」キスキンの女の子が叫びます。

見るとフェアリーたちが、その羽で飛行しながらアシュリングとキスキンの子を支えていてくれたのです。

「砂岩を食べるのは控えたほうがいいぜ、炎族」今度は左肩から、男のフェアリーの声がします。「全部腰回りについてるぞ」

「あんたもね、キスキンの子」女が付け加えます。「甘いものは控えめにして、もっと肉を食べなさい」

フェアリーたちに軽口をたたかれながら、アシュリングは川に落ちてしまったキスキンたちが気がかりです。一家のことも助けてほしいとフェアリーに要望すると、キスキンなど世に何人でもいる、助けるほどの価値はない、と残酷ですげない回答。

ではなぜ私のことは助けたのか――。

アシュリングは疑問に思うとともに、キスキンの子どもたちに対して奇妙な保護欲を感じていることに気づきます。自分を受け入れてくれる「生身の民」と話したのはずいぶん久しぶりのことだったのです。

アシュリングはフェアリーたちの思惑を利用し、自分自身をいわば人質のように使うことで、キスキン一家を救うように仕向けることに成功します。

しかし、身体の小さいフェアリーにとって、乗客全員を救い出すことはリスクを冒す行為でした。アシュリング自身も、身体に水を浴び続けたことで消耗しており、意識を失いかけます。

「しっかりしろ、炎族の友人よ」川上の方から、聞き覚えのあるシグの低い声が聞こえました。

「どうも……」アシュリングは喘ぐように言い、重い頭を巡らせながら微笑みを向けました。「船長さん」

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